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秘書 珠代(3)
 珠代はハンドバッグをロッカーに仕舞って応接間のソアァーに腰を下ろした。膝上十センチでもスカートがタイトなので裾が腰の近くまでずり上がる。珠代は露出した美脚を揃えて社長が来るのを待った。

 室内に音楽が流れている。耳に快いBGMで珠代の緊張が和んでいく。

 その音楽に耳を預けていると室長が社長と姿を現した。珠代はソファーから立ちあがると社長を真直ぐ見つめて採用のお礼を言い、深いお辞儀をした。

「こちらこそ、よろしく。会社の発展のために共に頑張りましょう」
 小野田は顔に笑みをつくって返し、珠代に腰を下ろすように促してから、倫子と一緒にソファーに腰を下ろした。

 その小野田の正面に珠代は座って膝を合わせて視線を下げている。その珠代の全身を小野田はさらりと視線で撫でてから、差し障りのないことを訊く。
「通勤はどうでした」

 珠代は下げていた視線をあげて微笑し、形の良い唇で応えた。
「混んでいましたので女性の専用車両で来ました」と。

 小野田は顔に含みのある笑顔を湛えると、
「専用車両ですか。だいたい、あなたのような美人をただで触るなんて言語道断ですよ」
と、珠代の化粧で美しく輝いている顔を正面から見つめる。

 実際、よくぞ中堅の建設会社なんかに応募してくれたものだと小野田は思う。その顔立ちに申し分のない美脚だ。採用に試行期間を設ける必要性もないだろう。

 その珠代を倫子が女の目線で見つめていた。珠代が脚を組まないで小野田に美脚をすれすれまで見せて話していることに、この女の憎いほどの素直な性格に嫉妬していた。きっと、服務規程を隅々まで読んできたのに違いない。

 倫子は二人の話が途絶えるのを待ってから、研修資料をテーブルに置き、
「社長秘書は服務も給与も一般事務職と一線を画すのは会社を代表する女性であるからです」
と、初めに珠代に告げる。

「ですから身嗜みや服装は個人的な趣向を排除した秘書の規定を遵守してください。髪のセットや口紅の乱れ、パンストの伝染は絶対に赦されません。服装は地味でもなく、そうかといって派手でもなく、女の清潔な色気が漂っていなければなりません。わかりますか」

 珠代は室長のしつこい講釈にも不快な表情は見せずに「はい」と畏まって返事をする。小野田は女の仕事の話になったので席を外した。

 倫子の服務規程の説明はさらに続く。

「ところで珠代さん」
室長にあらたまって名を呼ばれたので珠代は緊張して倫子を見つめた。
「ご自分のお体で自信のある部分はどこです」
 
 珠代は室長の歯に衣着せずの質問に一瞬、返す言葉を失った。けれども、いつまでも沈黙は失礼になるので、
「…ありません」
と、白々しいが、そう応えた。

 倫子は嫉妬の目で珠代の美脚を見て、
「そのスカートは膝上十センチぐらいかしら。そんな綺麗な脚なのにもったいない。十八センチにしたら」
と、口にしてみる。

 珠代も膝上十八センチのタイトスカートは仕立てあるので、
「これからは、そうします」
と、返事をした。

 そうして室長の服務規程の説明は下着類まで及んだ。伝染したパンストを接待している顧客の目に晒すのは絶対に避けること。そして下着類は常に秘書にふさわしいものを身に着けていること等。

 室長の下着類まで及んだ説明に珠代は戸惑っていたが、その反面、秘書という職が男の想像しているイメージとたいして変わらないものであるということが確認できた。珠代もそれを承知しての応募だった。

「お給与が高いのは、そういうことがあるからなのよ。わかっているでしょ」
「…はい」
 珠代は室長のこれでもかという念押しに、少し遅れて返事をした。

 服務規程の後は研修の説明になった。明日から三日間は新入職員の全体研修で、その後は二泊三日の歓迎会を兼ねた専門研修になっていた。

 この日、珠代は会社を定刻に退社すると百貨店に寄り、婦人雑貨でパンストをまとめて買い、婦人下着ではブラとショーツをそれぞれセットで数枚買った。

 その下着類だけれど、珠代が売場で秘書にふさわしい下着について悩んでいたら、お節介な店員さんに思惑で早々に選ばれてしまった。そのお品には恥ずかしくて赤面するのもあったが、珠代の優しい性格が店員に突き返すことを許さなかった。

 それでも百貨店から帰宅する珠代の顔は明るかった。結婚後の公務員宿舎に閉じ込められた専業主婦の時代、そして亡くなった夫への喪に服した一年。それらを合わせた長く退屈なトンネルから抜け出すことができるという安堵と希望が珠代の顔を明るくしていた。



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