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秘書 萌美(31)
 倫子、響子、萌美の三人は応接間で顔を見合わせて、ひそひそと話をしている。萌美が席に戻った後、小野田から秘書の全員に辞令の交付があるからと告げられたのだ。その彼は朝の定例部長会議で席を外している。

「室長、大丈夫よ。昇給の辞令だから」
 倫子は隣の響子から励まされる。
 
 心配性の倫子は顔色が悪い。

 秘書室長という管理職の肩書は就いているけれど、年齢的には秘書をお払い箱になって総務に異動させられてもおかしくはないと、倫子は本気で心配している。仕事の成果をあげたのは入職一年目の年だけで、あとの二年はお得意先の接待ゴルフと新入りの面倒だけで、部長級の高給を頂けるほど世の中は甘くないと思っている。

「室長よりも、わたしの方が心配だわ」
 室長を励ました響子も顔色が冴えない。

 響子も去年は大きな仕事を請負うなど大活躍したが、今年は、新入りの若い秘書が入職して、人妻秘書の需要も薄くなったのではないかと…。

 減給はしかたがないと諦めても、総務への左遷だけは勘弁してもらいたい。やっと軌道に乗った余裕のある貯金もできなくなるし、秘書と総務のOLでは社会の見る目も段差が大きい。響子は総務への異動の辞令だったら、身体で撤回させるつもりでいる。
 
「わたしも心配だわ」
 萌美も小野田が試行期間の廃止の約束を守ってくれるのか心配だった。抱かれたときの淫らぶりを会社の宝だなんておだてられて、いい気になっていたが、社長の気が変らないか疑心暗鬼になっている。

 その三人が心配している所へ小野田が戻ってきて社長席に姿を消した。そして辞令の交付が始まった。最初に呼ばれたのは萌美で、深呼吸をしてから席から立ちあがり、社長の席へと行く。

 そして応接間との境でお辞儀をしてから、数歩、小野田の方へと進み出てから目線を下げて、小野田の言葉を待った。

「そんな遠くじゃ、辞令を渡せないよ」
「はい」

 萌美は椅子を回転させてこちらに向き直った小野田の傍に行く。その萌美を小野田は見つめてから立ち上がり、辞令を読み上げる。

「新海萌美殿、秘書室勤務を命じる。俸給は二等級十二号俸です」
「はい!ありがとうございます!」

 萌美は小野田に深くお辞儀をした。約束してくれたとおり試行期間は無くなり、給与も高い俸給になっていた。これで基本給は四十七万円にもなり、転職前の給与の倍近くになる。萌美は嬉々として席に戻った。

 次は響子が呼ばれた。響子も深呼吸してから椅子から立ち上がり、社長席へと行く。小野田は辞令を手にして椅子から腰を上げる。

「片山響子殿、秘書室勤務を命じる。俸給は二等級十一号俸です」
 小野田は辞令を読み上げてから、
「東洋地所では、よくぞ頑張ってくれました。ありがとう」
そう言って響子を抱擁した。

 そうした小野田の抱擁は、倫子は毎朝挨拶代わりに、そして響子は半年ぶりになる。このような行為は厳格な意味ではパワハラかセクハラになるが、なぜか、この社長にはこうされたほうが、女は安心できるのか不思議だった。

 響子は小野田にしばらく抱擁されてから席に戻った。

 最後に倫子が呼ばれた。

 倫子は二人が辞令の交付を受けている間に、お化粧直しまでしていた。

 倫子は席から立ち上がると社長席へと行く。小野田は席から立ち上がって倫子を待っていた。倫子は小野田の方へと進み出てお辞儀をする。

「三枝倫子殿、秘書室長を命じる。俸給は二等級一号俸です」
 小野田は辞令を読み上げてから、
「東洋地所との契約も、今回の京葉電鉄もあなたの社交性が大きく寄与しています。その功績を湛えての昇給です。ありがとう」
と、倫子を抱擁した。

 二等級一号俸は社員の最高級である。基本給は五十五万円にもなる。さらに、秘書室長の管理職手当も付いてくる。倫子は感激を超えて小野田に抱き寄せられたまま嬉し涙を溢れさせた。

「総務に異動になるのかと…」
「社長の女房役を異動させるなんて、そんなことを…」

 小野田は倫子が心配性なのを承知している。だから、毎日、秘書たちの前にも関わらずに抱擁しているのに、あいかわらずの悲観主義には呆れ果てる。

 小野田はしはらく倫子を抱擁してから放した。倫子は辞令を胸に抱いて席に戻った。



次の更新は5/29(月)です。

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