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物語とエロスが満載のブログです。
DATE: 2019/06/14(金)   CATEGORY: 未分類
秘書 珠代(44)
 宴会の席は渓流に臨んだ茶屋の座敷に設けられていた。その座敷には十もの客席が衝立で仕切られてプライバシーを保っていた。

 小野田が設けた席は響子の時と同じで、座敷の隅にある個室の部屋で他の座敷と比べて料金もかなり高く設定されている。

 珠代と小野田はその部屋の窓から外を眺めながら風呂に行っている佐伯を待っている。

「佐伯はどうだった」
 小野田は窓下の渓流に視線を預けながら珠代に訊く。珠代はその質問の真意がわからなかったが、おそらく散歩の事を訊いているのではと思った。

「抱き寄せられただけです」
 珠代は言葉短く返した。

「仕事の話は?」
「指名参加は百数社があって、その中から小野田ハウスを選んだと言っていました」
 珠代は佐伯から訊いたことを話し損じることがないように正確に話した。

「それはたいしたものだよ珠代くん」
 小野田は思わず珠代の肩に腕を回した。

 珠代は久しぶりに小野田が体に触れて来たので身を預けようとした。心よりも体が研修での絶頂感を未だに覚えているのか、彼に触れられるのを欲している。

 しかし小野田は珠代の肩からすぐに腕を放した。

 珠代は薄闇に包まれている窓外から視線を戻した。その彼女の口から迸った言葉は本人も驚くほどだった。
「…なぜ放すのですか。一度抱いた秘書は取引先に捧げる商品だからですか」と。
 
 未亡人の体に火を点けておいて二度と抱いてくれない不満。そのくせ取引先には抱かせようとする不満。その小野田に対して溜っていた不満が口を突いて出たのに過ぎないが、彼女の優しい性格では考えられないことだった。だが、そういう気の優しい女は時にはヒステリーを起すのも事実。

 珠代はヒスの勢いでこのようにも言い切った。
「わたしは絶対に抱かれませんから」と。

 小野田はその珠代を意に返さず聞き流していた。勃起で摩擦してあげるだけで潮を吹いてしまうような感度の優れた未亡人が『絶対に抱かれませんから』と啖呵を切っても滑稽なだけ。

 …どれほど貞節なのかお手並み拝見といこうじゃないか。
 小野田は顔に意地悪な笑みを湛えて珠代から離れた。

 それからしばらくして浴衣を着た佐伯が部屋に戻ってきた。小野田と珠代はその佐伯を迎えて御膳の席に着いた。

 御膳には山間の茶屋らしく山菜と川魚をメインにした創作料理が並んでいる。佐伯の正面に小野田が座り、その隣に珠代が座る。

 小野田はビールの栓を抜くと佐伯のコップに傾ける。その後、互いに注ぎ合って乾杯になった。

「東洋地所さんのますますのご繁栄に乾杯」
 小野田と珠代が音頭を取ると佐伯が、
「小野田ハウスさんのご発展に乾杯」
と返す。

 乾杯したあとで小野田がさっそく口を開く。
「佐伯部長さん、秘書を甘やかしてはだめですよ」
 小野田は宴会の初めに釘を刺す。先の珠代の態度に対して報復のつもりだった。

 佐伯も珠代が傍にいなくて不満だから、
「こちらにきてください」
と、お願いする。

 珠代も取引先の部長にお願いされてはいかないわけにもいかない。そうかといって傍に行けば抱き寄せられることはわかっている。

 珠代は気が進まない素振りをしばらく見せてから腰を上げた。そして、御膳を回って佐伯の側に行くと、彼から座布団を少し離してから腰を下ろした。

 小野田はその珠代を不快な顔で見ているが、すぐに顔に笑みを湛えて、
「席が落ち着いたところで、佐伯部長もう一度乾杯しましょう」
と、彼のコップにビールを注いでいく。

 そのビールをコップの半分しか注がないようにして佐伯に飲干させてから、
「珠代くん、注いであげなさい」
と、きつい目で彼女を促した。

 珠代はしかたなく座布団を佐伯の傍に置き直してビールを彼のコップに傾けていく。

 その珠代の腰に佐伯の腕が絡みついて引き寄せられる。珠代は一瞬ビールを零しそうになるが、気を鎮めてから注いでいった。



・次の更新は6/21(金)の予定です。


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