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物語とエロスが満載のブログです。
秘書 萌美(47)
 道路の渋滞に遭い、レクサスがマリーナに着いたときには桟橋は夜の明かりが灯っていた。

 夕暮れのクルージングは中止になった。それでも輝彦からの連絡を受けていたマリーナの従業員によって、艇のキャビンのテーブルには夕食の料理が並べられていた。

 キャビンはマンションのリビングのように広く、ここが船であることを忘れさせられる。テーブルがとても洒落ていて、硝子の天板には印象派の絵が描かれている。そのテーブルの上にワインと肉や魚の料理が皿に盛られている。

「社長がいないから緊張しますか」
 輝彦が萌美の緊張を見透かしてそう言い、グラスにワインを注ぐ。

「そんなことはないです」
 萌美はそう返し、テーブルの絵に目線を預ける。

 小野田に礼状を託されたとき、こうなることを予想はしていた。が、断り切れない自分の優柔を責めるべきか、それとも命じた社長を恨むべきかいまでもわからない。ただ、はっきりしているのは秘書という身分を失いたくはない自分がいるということだった。

「では乾杯!」
「ご指名ありがとうございます」
 萌美は最低限のお礼を口にして輝彦のグラスと合わせた。

 乾杯の後、料理を口に運ぶ。輝彦は魚料理を中心に白ワインを。萌美はその逆で赤ワインを口に含み、肉料理に舌包みを打っていく。上司の小野田がいないせいなのか、前回と同じ料理なのに味が微妙に違う。

「どうして小野田ハウスさんを指名したのかわかります」
 ワインの酔いがまわってきたところで輝彦が触れてほしくはないところに触れてきた。

「…いいえ」
 萌美は小さく応える。

「素晴らしい住宅を建てるからです」
 輝彦は顔に笑顔を湛えて言い、

「事業部の調査では小野田ハウスが建設した住宅は査定が甲です。まあ、指名の八社はすべて甲ですけどね」
 輝彦は萌美を見詰めながら続きを話し、グラスを差し出す。

「お褒めいただいて恐縮です」 
 萌美は彼のグラスに白ワインを注ぐ。

「あと、ひとつあります。なんだかわかります」
 輝彦は注がれたワインをそのままにしてグラスをテーブルに置き、萌美のグラスに赤ワインを注ぐ。

「…いいえ」
 萌美は小さな返事で逃げる。

「思い出しませんか。社長さんが僕に約束したことを。あなたも耳にしているはずですが」
 輝彦は子猫を棒で叩くように目の前の女を虐めていく。

「…なんのことなのか、わたしにはよくわかりません」
 萌美はそのように答えた。間違っても、正直に応えたりしたら貞淑が疑われる。
 
「そうですか」
 輝彦は席を立ち、シャワールームからバスローブの帯を持ってきてテーブルの上に置く。

 萌美は帯を見て見ない振りをして、ワインを飲んでいく。お酒はそんなに好きではないのに身体が要求してくる。

 その萌美を輝彦は見つめる。女が何かを思いだし、それに興奮して心を乱しているのが彼にはわかる。女の瞼の瞬きが忙しく、胸が起伏している。

 輝彦は顔を女の方に近づけて、
「手をこちらに差し出してください」
と、女に囁く。

「いやです」
 女が顔を振る。

 拒みながらも女の目には怪しげな光が宿っている。あの時に経験した背徳な何かが蘇ってきたのか、身体が小さく痙攣してブラウスの胸が息づいたように震える。

 輝彦は確信する。

 …この女は期待している。

 ならばどうしたらいいのか。女が自分に言い訳ができる免罪符を与えてあげればよい。

「言うことを訊かないと、指名を反故にしますよ」
 輝彦は意識して強面になり、女にそう言った。

 それで決心がついたのか女の腕が微かに震えながらも輝彦の方へと伸ばされてくる。輝彦はその手首を掴んで帯を結ぶ。

「こちらへ来てください」
 輝彦は帯を引いた。女が帯に腕を引かれて輝彦側のソファーに来る。

「さあ、ここにお座りください」
 輝彦は隣に女を座らせる。それだけでブラウスの突き出しが震える。

 輝彦は帯で結んだ女の手首を取り、
「さあ、両手を後にしてください」
と、命じる。

「…いやです」
と、女は哀切な顔で拒んでくる。

「片腕だけでは意味がありませんよ。そうでしょう」
 輝彦は女の手を掴む。そして両手を後にして縛っていく。

 その間、女は切ない声を上げて拒んでくるが、意外なほど短い時間で縛り終える。女が無意識のうちに協力してくるからだ。悲しいかな女はそれに気づいていない。


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