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物語とエロスが満載のブログです。
秘書 萌美(103)
 それから一月が経った。

 小野田ハウスでは萌美が手に入れた単価表に基づいて見積書を作成し、入札に臨んだ。その結果、数社とはげしい競争を繰り返して落札した。落札額は戸建住宅百十棟、鉄筋コンクリート造りの分譲マンション五棟の総額百二十億円もの大規模工事になった。

 入札会場から戻った小野田は、その日の午後、担当秘書の新海萌美にさっそく菓子折りを持ってお礼の挨拶に行くよう命じた。本来ならば社長の小野田が同伴してお礼の挨拶に行かなければならないが、女好きの輝彦のために気を効かしたつもりだった。

 萌美は小野田から礼状と高級菓子折りを持たされて会社を出た。季節は晩秋になっていた。街路に散った銀杏の葉が風に吹かれて、駅へと急ぐ萌美の足元でさらさらと音を立てている。

 十月も終わりだというのに日射しが強くて汗ばむほどで萌美はスーツの上着のボタンを外した。ブラウスの胸が突き出してくる。光線の陰影でブラのカップの輪郭がありありとしている。

 その輪郭が脚の繰り出しでヒールの靴音ともに悩ましく震えている。そのせいなのか、すれ違う男の視線が胸に注がれてくる。

 そんな男の好奇な視線には慣れているはずなのに、萌美は気になってスーツの衿を合わせて歩くが、ボタンを締めなおすにはめんどくさく、また手を放して歩いていく。

 乳房が春の入社当時よりも一回りほど大きくなっていた。体重はむしろ減って痩せたのに…。社長の小野田や輝彦によるしつこい愛撫で女性ホルモンの分泌が増したせいだと萌美は思っている。

 …女のカラダっていやらしい。

 萌美は口元に笑みを浮かべて静かに呟くと、駅へと小走りした。

               *******

 午後の昼下がりの電車は地下鉄も空いている。
 
 萌美は座席に腰掛けると菓子折りを脚に置いて目を閉じた。これでお仕事のすべてが終わるかと思うと、明るい未来に気持ちがはずんでくる。社長からは褒められるし、給与も大幅な昇給を約束してくれた。

 これで奨学金の返済はもとより、住まいも中古マンションから新築のタワーマンションへ引っ越すことも可能になる。やはり、あのとき恋人や周囲の反対を押し切って転職を決断し、秘書になってよかった。萌美はそのように脳裏のもやもやを整理して目を閉じ、人体の摂理に身を預けた…。

 萌美は人の体温を身近に覚えて目を開けた。席がガラガラに空いているのに、座席の正面と隣に男が座っていた。萌美は席を立って車両を移動した。それから一駅乗って地下鉄を乗り換え、京葉電鉄のテナントビルの最寄りの駅で降りた。

 …輝彦という男。

 萌美は駅を降りると否応なしに彼のことが頭に浮かんでくる。あの旅行から一月しか経っていないということもあるが、いまだに彼の肉の嫌らしさを覚えている。

 硬派の電鉄会社の部長だというのに女の体をあんなに知り尽くしている。いつの時代でも女って、そういう権力のある男に肉を打たれて泣かされる。でも、その男とも顔を合わせるのはこれが最後になる。

 …お礼の挨拶をしたらすぐに帰るのよ!

 萌美は歩む足を止めてまで脳裏で決心し、呼吸を整えてから京葉電鉄のビルへと向かった。

               *******

 エレベーター前には昼の外食を済ませた男たちが並んでいる。時計の針を見ると午後の一時前だった。社長に急かされて会社を出たので時間の感覚を忘れていた。
 
 萌美は珈琲店で時間を潰してこようかと思ったが、そんな気苦労がめんどくさくなり、扉が開いたエレベーターにテナントの社員と乗った。そして二十三階で降りる。

 萌美の他にもエレベーターを降りた数人の社員が京葉電鉄の事務所に入っていく。受付のカウンターには当然のように受付嬢がいない。

 萌美は引き返すつもりでヒールの踵を返した。そのとき女性に呼び止められた。その女性は受付の担当でたったいま、昼食を済まして戻ってきたばかりだという。

 萌美は昼休みの時間に来てしまった失礼をお詫びしてからその女性に名刺を渡し要件を伝えた。女性はカウンターの椅子に腰掛けるとインターホンを輝彦に繋いでみる。

 萌美は輝彦が不在であることを願った。この状態で会えば、お礼の挨拶の他にもお詫びの時間を費やすことになる。そうなれば、その場から逃れる余裕がますます無くなる。

「在席していますから、こちらにどうぞ」
 受付嬢が事務所のドアを開けて招いた。

 しかたなく萌美は受付嬢と事務所に入った。広い事務所には外出から戻ってきた社員があちらこちらで雑談している。その社員たちが通路を歩いて行く萌美に視線を注いでくる。

 萌美はスーツの上着のボタンに手を掛ける。そのボタンの一つを掛けた所で部長室の前に着いた。
 
「こちらです」
 受付嬢がそれだけ言って通路を引き返していく。いかにも、こんな時間に来て!と不機嫌が態度にも現れている。

 残された萌美はいまさら引き返すこともできずドアをノックした。するとなんと輝彦がすぐにドアを開けた。

 萌美は正面にいる彼から一歩後ろに退くと、あらかじめ脳裏で復唱していたお礼の挨拶とお詫びを、できるだけ言葉少なめに口にしてお辞儀をすると、菓子折りを床に置いてヒールの踵を返した。

 そんな萌美の行動は輝彦にとっては想定内のことで、さっと腕を伸ばして手を掴み、部屋の中へと引きずり込んだ。

「…は、はなしてください。か、勘違いしないでください」
 萌美は腰に腕を回してきた輝彦の手を拒みながら一生懸命に言い訳をする。

 そんな言い訳が通じる相手ではない。お得意様の部長であると同時に三度も抱かれて痴態を晒した男だった。口先のお礼なんかよりも肉の挨拶を要求される。

「せっかく昼休みの時間に来てくれたのに」
 輝彦は顔を顔に被せると口を合わせた。そして逃がさないように部屋の奥へと引きずっていく。 

 萌美の後頭部を抱えて口を合わせながらスーツのボタンを外してブラウスごと乳房を揉みしだき、スカートを捲り上げて秘部を撫でながら奥へ奥へと引きずっていく。

 女の反応は可哀想なほどに早かった。部長机の傍まで来たときには濡れていてショーツがヌルヌルになっていた。女か観念した証しで両腕をだらりとして輝彦の方へ倒れてくる。

「…工事は三期、四期と続く。小野田ハウスさんにはこれからも頑張ってもらいたい。もう、あんたは放しませんから。僕のものです」
 輝彦は女の抵抗がなくなったので安心して腕を緩め、言葉を吐いていく。

 萌美は乳房を掴みだされながらも輝彦の言葉を脳裏で反芻する。三期、四期の工事も落札すれば秘書の給与はさらに昇給すると…。         
                                        
                                            完結



.『秘書 萌美』が終わりました。長い間、ご愛読ありがとうございました。
.7/2(月)から秘書シリーズの完結編『秘書 珠代』を連載します。その準備のためにしばらく休筆します。


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