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物語とエロスが満載のブログです。
秘書 珠代(10)
 佐伯の運転でレクサスは造成地を巡っていく。第一期、そして第二期の響子が接待で事実上落札させた住宅地、そして第三期と過ぎて第四期の『蛍の郷、住宅マンション建設工事』の現場に着いた。

 車を降りると遠方で丘陵を切り崩している重機の音が一行の耳に届いてくる。第四期・下半期の造成地を整地するブルトーザーの音で風に乗って聴こえてくる。

「ご覧のように上半期の五十棟は終わっています。残りは下半期の百五十棟です。そのうち五棟をマンションにしようかと」
 佐伯が第四期・下半期の造成地を眺めながら言う。

その彼の後から小野田が寄る。
「この小野田にやらせてください」

 佐伯は返事を保留してオープンハウスの方へと歩いていく。その彼が時折、背後にも顔を振って珠代の姿を確認している。

 佐伯が気に掛ける女は久しぶりだった。女の美脚に悩殺されたわけではないが、珠代という女には男の気持ちを和ませる優しさが顔といわずに全身に現れている。そういう女が脚とその奥まで見せてくるということ。そこには上司の意向があったとしても、女に欲求が息づいていなければ簡単には実行に移せないものだ。と、佐伯は自分に都合の良い理由づけをすることを忘れない。

 その珠代が事務所での佐伯の視線に気後れして離れていくのではないかと彼は危惧していたのだ。だがその心配はなく、彼のすぐ後ろをついてくる。

 佐伯は安心して立ち止まり、小野田に返す。
「規模がでかいぞ。マンションもある。小野田さんにできるかな」と。

 もちろん小野田は昨年の実績である京葉電鉄不動産の大規模請負工事の例を佐伯に説明するが、佐伯の目的が珠代なのは承知しているから工事の細かい説明は省略した。

 その代りに珠代を傍に呼んで、
「佐伯部長さんからオープンハウスのことをよく聞いておくように」
と、秘書の職務としての仕事を命じた。

 そのとき佐伯が満足げな顔をしたのは言うまでもない。一方で、珠代は初めての仕事に緊張した面持ちで佐伯によろしくお願いしますと頭を下げた。

 オープンハウスは住宅が建ち並ぶ緩やかな階段状に区画された土地に八棟が建っている。その最初の一棟は全員で住居内を見学したが、残りのハウスは珠代に任せて小野田と倫子は現場監督と下半期の造成地へと向かう。

 残された珠代は佐伯とオープンハウスの中へ入っていく。玄関でヒール靴を脱いで佐伯とリビングルームへと行く。窓はレースのカーテンが掛けられ落ち着いた明るさになっている。

「建坪の割には広いでしょう」
 佐伯は下心があるわりには真面目な問いかけをする。

「そうですね」
 珠代は居間を見廻して広さを実感する。一二階合わせて百平米ぐらいなのに居間だけで五十平米近くはあるだろうか。

「最近、こういう間取りが流行ってますがね…」
 佐伯はそう言って珠代に向き直り、
「リスクは何だと思います」
と、見つめてくる。

 珠代は失礼にならない程度に佐伯の視線を受け入れてから反らし、
「地震に弱いということかしら」
と、答えてから応接セットのソファーに視線を移す

 佐伯は珠代の答えに意識して驚き、
「そのとおりです」と、居間の中を歩き周り、「家を買うときは流行に騙されない堅実な間取りの家を買うことです」
と、わざわざ珠代の傍まで来て言う。

 そして珠代が傍に寄っても二人の距離を維持していることをいいことに彼女の腰に手を添えて、
「二階をご案内します」と促した。
 
 珠代は佐伯に促されるままに二階に上がっていく。自社のオープンハウスなのにリスクまで説明するなんて、正直な人だわ、と佐伯の人柄を評価する。それが女好きの佐伯の真骨頂で下心を隠蔽して珠代を信用させてしまう。

 二階は寝室と六畳の部屋で、佐伯は寝室を後回しにして六畳の部屋を案内する。収納スペースを多く設けた流行を取り入れていて、ここでも彼は珠代に質問する。
「二階に収納スペースを多く設けた家に対するの地震の強度はどうでしょうか」

 佐伯はそう質問して収納スペースを見ている珠代の後ろ姿を視線で撫でまわす。タイトスカートを穿いたお尻に下着の線が微かに映っている。

 …美脚に美尻か。

 その女が振り返って答えてくる。
「地震に弱いのですか」と。

「ぶー。残念でした」
 佐伯は笑って珠代の傍に行き、
「強度はむしろ強くなりますが、廊下や部屋がその分狭くなります」
と、珠代の腰に手を添えて寝室へと促す。

 寝室のドアを開けて中に入る。ベッドが二つ置かれている。そして洒落た姿見と化粧台が一体化した最新の家具。窓は厚いカーテンが閉められていて寝室は夕暮れのように薄暗い。

 寝室に来ると佐伯の口数が極端に少なくなる。女を抱き寄せてからの段取りを脳内で整理しているからで、下心が強ければ強いほど寡黙な時間は長くなる。

 その一方で珠代は専業主婦になってからの長期間に及ぶ男づきあいのブランクが警戒心を呆れるほどに鈍くしている。

「…第四期の工事、欲しくありませんか」

 珠代は佐伯の声に寝室の家具類にやっていた視線を戻して振り向いた。佐伯の顔がすぐ近くにあり、腰に腕が回されてきた。


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